LOG IN

小川洋子「約束された移動」

by 或人

小川洋子「約束された移動」

出版日 2019年11月

出版社 河出書房新社

文芸アドベントカレンダー(miyayukiさん主催)の7日の分に参加しました、或人と申します。

アドベントカレンダーについては下のツイートをごらんください。

前の担当はShinshi kutsu 4さん

 私の次の担当は笠井康平さん

 ここから私の紹介です。

 今回紹介する本はもうタイトルにも出ていますが「約束された移動」という本です。小川洋子といえば代表作は「博士の愛した数式」などでしょうか。個人的には「最果てのアーケード」もオススメです。

 元々小川洋子という作家が好きだったのですが、自分の生活を見直す機会があったときに「最近、手に取るのは海外文学か近現代の文豪の作品ばかりだ……」と気づき新しめの日本の本を買おう!! と思いました。その中で手に取ったのがこの本でした。アドベントカレンダーで書こうと思うくらいに、この本が心に刺さりました。記事を読んで、面白そうと思ってもらえたらうれしいです。

 この本はいわゆる短編集で、6つのお話が入っています。全部のあらすじと見所を言うのも無粋な気がするので特におすすめの2作品を。

【約束された移動】

<あらすじ>

ホテルの客室係をやっている「私」はハリウッド俳優Bととある秘密を共有していました。それはホテルの本棚を一冊、Bがもっていくこと。そして「私」は本棚に生まれるその隙間を埋めていた。

Bがもっていく本を読みながら「私」はBの面影を追いかけます。

<感想とおすすめポイント>

表題作ですね。ハリウッド俳優Bの演じる映画の世界と持ち去られる本の世界の重ね方(主人公の「私」が重ねているわけですが)が見事です。演じるBについての描写も、痛ましさと独特な視線で描かれます。映画が好きな人間なので、その映画についての描写もうれしかったのでした。

本文を追いかけながら読者のわたしたちも旅をして、その世界に入っていきます。客室係で会話をすることもない「私」とBの関係性がどこか温かく、安らかな気持ちにさせます。

正直、このエピソードのためだけに本を買ったといっても過言ではありません。一等好きな作品です。

【元迷子係の黒目】

<あらすじ>

主人公の家の裏の平屋には遠戚の女性が住んでいた。名前の呼び方は絶対に「ママの大叔父さんのお嫁さんの弟が養子に行った先の末の妹」。彼女は親戚の中でも珍しい職業婦人としてデパートで人生を築いた人だった。彼女はいくつかの仕事を受け持ったが、一番力を発揮したのは警備課迷子係だった。

<感想とおすすめポイント>

迷子係として迷子を見つけるのがうまい遠戚の女性と、幼く無邪気なところが多く無知なところもある主人公の物語です。本当はもっといろいろと言いたいことがあるんですが、読んでみてほしい。そしてこの関係性がこう進むの!? という小川洋子マジックにひたってほしい。

主人公は無知ではあるけれど、馬鹿ではありません。自分の好奇心との付き合い方をしっかりと考えられる子です。家族はこの女性をあまり好きではないこともわかっていて、「私」はバランスをとりながら女性と会話しています。この独特な世界観が特におすすめしたいところです。親戚ではあるけれど、ほぼ他人といっても差し支えない関係の女性とつかず離れずの関係を保っていた主人公が、女性へ抱く思いとは。迷子という言葉が示すものにも深く考えさせられる作品です。

小川洋子マジックというものが、この作品にはいっぱい見られるなあと思います。特に前進するでもない、後進でもない、でも確かに名前のつけられない関係性が変わった瞬間がある。そのシークエンスを切り取ったような作品たちです。

ぜひ、自分の目で読んで確かめてみてください。

最後に、アドベントカレンダーの開催お疲れ様です。ほかの方の記事も楽しく読んでおります。

文章考えるのとても楽しかったです

↓アドベントカレンダーに飛びます

OTHER SNAPS