今回、海外文学アドベントカレンダー(主催:藤ふくろうさん)に参加することになった或人と申します。
海外文学アドベントカレンダーについては下のツイートをごらんください。
前の担当さんはゼロモチベーション済藤鉄腸 (Tettyo Saito)さん。
次の担当さんは 箱[いぬ いぬ] (倉田タカシ)さんです。
テーマは 海外文学について です
わたしがお話するのはタイトル通り「おれの目を撃った男は死んだ」になります。
作品のおすすめの前に読書アカでもない人間が参加するにいたるまでをちょっとだけ書きます。
【海外文学と再会した】
学生の頃ってもっと海外文学読んでた思い出があるのに最近は全然読めてませんでした。日本文学たくさん読まなければならない環境に身を置いたのが1番大きい理由でした。(趣味の映画にさらに時間をかけられるようになったのも大きいかもしれない)
そんな中、今年はコロナの影響を受けてCAVABOOKSさんが選書企画をやっておられました。
↓(これは来年2月からはじまるツイートです)
わたしはツイートを見たときには既に応募の締切が終わったあとでした。悔しかったです。この企画に参加されていた人がフォロワーの中にいたので毎月、この本が届きましたという報告とその感想を楽しみにしていました。発売されてから2月の本を選ぶという作業、そして色んな国の翻訳の本。楽しそうだなあと思いました。わたしの知らない本がいっぱいあって、どんどん更新されていくのに置いてけぼりになったような感覚でした。
そして自分も久々に本屋で本を探すか、という気持ちになりました。
【シャネル・ベンツと出会った】
ここから本編です。本屋に何度か足を運び、本を購入しました。誰かのオススメの本だったり、映画の原作本だったり、有名な古典作品だったり。そうこうしている中で、シャネル・ベンツに出会いました。ド派手なバラの絵、面白い作者の名前、タイトルの異様さに惹かれて購入しました。(もちろんあらすじまで吟味してますが、装丁に意識を向けるようになってからはそのデザインに惹かれるようなことが多かったので)
シャネル・ベンツ「おれの目を撃った男は死んだ」
発行日:2020年5月
発行社:東京創元社
10編を集めた短編集です。先にも言った通り、読書から離れていた人間なのでこれはデビュー作であると言われてもそうなんだ!! で終わりました。
元々ウェルベックなどの異様な世界の詰まった作品が好きだったのでカバー袖の煽り文句も気になっていました。
暴力と欲望に満ちたさまざまな時代と場所で、夢も希望もなく、血まみれで生きる人々。人間の本質を暴き出し、一瞬の美しさを切り取った、O・ヘンリー賞受賞作「よくある西部の物語」ほか全10編収録のデビュー短編集!
引用元:「おれの眼を撃った男は死んだ」カバー袖
目次はこの通り。
よくある西部の物語
アデラ
思いがけない出来事
外交官の娘
オリンダ・トマスの人生における非凡な出来事の奇妙な記録
ジェイムズ三世
蜻蛉(スネーク・ドクターズ)
死を悼む人々
認識
われらはみなおなじ囲いのなかの羊、あるいは何世紀ものうち最も腐敗した世界(オ・セキュラム・コラプテイシマム)
この中で2つ感想とオススメポイントを
「アデラ」
<あらすじ>
「ご近所のアデラ」は美人なのに結婚もせずに独りで暮らしている。子どもだった「わたし」たちはそんな彼女の家に遊びに行ってはいつも遊んでもらっていた。彼女を捨てたらしい恋人ともう一度付き合ってほしくて「わたし」たちはとある計画を立てたのだった……。
<感想>
1829年、匿名の作家によって書かれたものを現代の人間が注釈をつけた作品。最初、この注まで作者のものだと気づかなくて「バーティミアスみたいな注釈で面白いなあ」と思ってました。訳者あとがきでようやく知りました。
シェイクスピア作品のオマージュが多く、ある意味アンチテーゼを込めていたのかなあとさえ思います。
子どもたちの無邪気な残酷さと、その結末に対して自分たちは子どもだったから仕方ないと言いたげな表現。悲惨な結末だった、と「わたし」は言うけれど、その言葉は誰に向けてのものだったのか。皮肉のこもったような注釈もまた面白かったです。
「死を悼む人々」
<あらすじ>
夫を亡くし、今は自分を嫌う義母と息子とともに暮らしている主人公エメリン。夫はそれなりに金持ちで、寡婦になった自分はどう振る舞えばいいのかエメリンにはよくわからないでいた。
ある日、売春婦の所有者である父親から「おまえが必要だ」という手紙をもらう。エメリンは息子をナニーに預けて父のもとへ向かった……。
<感想>
エメリンの居場所のなさがものすごく悲しいのですが、そのやるせなささえも重要になっていく感じ。この作品と似たような「やるせなさ」を感じるのが「ある西部の物語」なのですが。映画だったら、そしてもしこの人たちが男だったら絶対にいい悪役として描かれていたよなあという気持ちになります。(悪役のカタルシス的なところがぴったりだと思うんですよねえ)
エメリンが夫を亡くしたあとをきっかけとして人生がどんどん崩れていく様子をつぶさに描いていて、不快さと一緒になぜか美しさを感じます。
ベンツの作品はなんだかミヒャエル・ハネケ(代表作「ファニーゲーム」)の映画のような雰囲気があります。悪意のない悪意と、虐げられる人々、その暴力と理不尽の中に生まれる人間の美しさを追い求めたような作品でした。不快さの中になにか綺麗な姿を見つける、とても面白い読書体験でした。
【最後に】
アドベントカレンダーに参加させていただきありがとうございました。好きな作品について沢山考えて言葉を選ぶ行為はとても楽しかったです。
他の人のように「いつも本を読んでいます!」と胸を張れないので恐縮ですが楽しんで頂けたら嬉しいです。
ありがとうございました
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或人